行政代執行とは? 空き家を放置するリスク
「空き家を放置すると固定資産税が最大6倍になる」という話は、すでにご存知かもしれません。しかし、空き家対策特別措置法には、それ以上に強力な措置である「行政代執行」が定められています。
行政代執行とは、所有者が空き家の管理を怠り、周辺地域に危険を及ぼしていると判断された場合、自治体が所有者の代わりに強制的に解体や修繕を行う制度です。そして、その費用は後から所有者に請求されます。
この記事では、空き家の行政代執行がどのようなものか、その流れと、所有者が負うことになる金銭的な負担、そして京都市の事例を交えて詳しく解説します。
「行政代執行」は最後の手段

空き家を行政代執行で強制的に解体するまでには、いくつかの段階があります。これは、所有者に行動を促すための最終警告と捉えるべきです。
行政代執行に至るまでの一般的な流れ
- 特定空家への指定: まず、自治体が倒壊の危険性や衛生上有害となる状態、景観を著しく損なっているなどの理由で、空き家を「特定空家」に指定します。
- 助言・指導: 特定空家に指定された所有者に対し、自治体から管理改善の「助言」や「指導」が行われます。この段階ではまだ強制力はありません。
- 勧告: 指導に従わない場合、自治体は「勧告」を行います。この時点で固定資産税の住宅用地特例が解除され、税金が最大6倍に跳ね上がります。
- 命令: 勧告にも従わない場合、「命令」が出されます。これに違反すると、50万円以下の過料が科される可能性があります。
- 行政代執行: 命令が出されても改善が見られない場合、最終手段として行政代執行が実施され、自治体の手で強制的に解体が行われます。
この流れを無視し続けると、自分の意思とは無関係に家が解体され、高額な費用を請求されることになります。
行政代執行で所有者が負う「高額な費用」

行政代執行で最も恐ろしいのは、その解体費用です。自治体は、解体や撤去にかかった費用を、所有者に全額請求します。
- 費用が高くなる理由: 自治体は入札によって業者を選定しますが、解体業者からすると、行政代執行による工事は手間やリスクが高いため、通常の工事よりも高めの見積もりを出す傾向があります。 また、解体費用以外にも、弁護士費用や測量費用など、様々な付帯費用が加算されることがあります。
結果として、自分で解体業者に依頼した場合の1.5倍から2倍の費用を請求されるケースも珍しくありません。
京都市における特定空家と行政代執行の事例
京都市でも、行政代執行の実施例があります。これは、京都市が空き家問題に積極的に取り組んでいる証拠です。
- 代執行件数(平成26年度以降):合計6件実施。
- 費用例:直近の案件では約150万円から、昨年度には約700万円に上る事例もあった。
- 事例の背景: 京都市では、老朽化が進み、倒壊や瓦の飛散など、近隣住民の生命・財産に危険を及ぼす恐れのある空き家を特定空家と指定しています。
- 事例の詳細: 京都市が公開している情報によると、長期間放置されていた特定空家に対し、指導や勧告、命令といった段階を経て、所有者が応じなかったため行政代執行に踏み切ったケースが報告されています。 行政代執行により解体された物件の費用は、所有者に請求されました。
これは、どの自治体でも起こりうる現実です。特に京都市のような観光地では、景観を保つためにも空き家対策が急務となっています。
事例1:倒壊の危険がある木造住宅の解体(○○区)
所在地:京都市○○区
状況:築60年以上、屋根や外壁が崩落し、台風時には部材が飛散。近隣住民から通報多数。
経過:市が複数回の改善指導を行うも、所有者が所在不明。
行政代執行内容:危険家屋を全面解体し、更地化。
費用:約○○○万円(後日、所有者に請求)
効果:通学路沿いの安全性が確保され、近隣から安心の声。
事例2:ごみ屋敷化した空き家の撤去(○○区)
所在地:京都市○○区
状況:室内外に大量の廃棄物が放置され、悪臭・害虫被害が発生。
経過:所有者に改善命令を出すも未対応。
行政代執行内容:建物を含めて撤去し、廃棄物を適正処分。
費用:約○○○万円(所有者負担)
効果:周辺環境の衛生改善、防犯性向上。
行政代執行を避けるための対策

「自分の家がまさか…」と思っている方も、他人事ではありません。行政代執行という最悪の事態を避けるためには、早期の対策が不可欠です。自治体の空き家活用相談や補助制度も利用してみましょう。
- 定期的な管理: 庭木の剪定や草むしり、換気、雨漏りの点検など、最低限の管理を定期的に行いましょう。遠方に住んでいる場合は、空き家管理サービスを利用するのも一つの手です。
- 売却・賃貸を検討: 空き家を維持するのが難しいのであれば、専門の不動産業者に相談し、売却や賃貸を検討しましょう。特に、空き家を専門に扱う不動産会社であれば、活用の選択肢も豊富です。
- 解体やリフォームの相談: 活用が難しい場合は、解体やリフォームの専門業者に相談しましょう。補助金制度を利用することで、自己負担を軽減できる可能性があります。
まとめ:空き家は「負動産」になる前に適切な対処を
行政代執行は、空き家を放置し続けた所有者への、最も厳しいペナルティです。放置された空き家は、近隣住民の安全を脅かすだけでなく、所有者自身の財産をも蝕んでいきます。
「いつか…」と問題を先送りするのではなく、今すぐ空き家の現状を確認し、適切な対策を講じることが、将来の大きな損失を防ぐ唯一の方法です。

