はじめに:空き家は「負債」になりうる
日本全国で増え続ける空き家。「誰も住んでいないから放っておいても大丈夫」と思っていませんか?空き家は、誰も住んでいないからといって放置しておくと、思いもよらないトラブルを引き起こす可能性があります。固定資産税の負担増や行政からの指導だけでなく、空き家が原因で近隣住民や通行人に損害を与えてしまった場合、所有者が多額の損害賠償責任を負うリスクがあるのです。
この記事では、空き家が引き起こす可能性のある「3つのリスク」と、それによって生じる損害賠償責任について詳しく解説します。
1. 倒壊による被害:思わぬ事故で賠償責任が発生

老朽化した空き家は、台風や地震、大雨などの自然災害で倒壊する危険があります。
もし倒壊した家屋や部材が通行人や隣家を傷つけたり壊した場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。
【民法717条】
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その所有者が責任を負う。
この条文は、建物の所有者や管理者が、建物の不備によって発生した損害について賠償責任を負うことを定めています。たとえ「自然災害だったから仕方ない」と主張しても、建物の管理を怠っていたと判断されれば、責任を免れることはできません。
過去には、老朽化したブロック塀が倒壊し、通行人が死亡した事故で、所有者に高額な損害賠償が命じられた事例もあります。空き家も例外ではありません。
2. 火事による被害:放火による延焼でも責任は所有者に
空き家は、不審者や心ない人による放火の標的になりやすいという側面を持っています。もし、放火によって火災が発生し、隣家に延焼してしまった場合、所有者はどうなるのでしょうか。
日本の失火責任法では、故意または重大な過失がなければ、隣家への延焼による損害賠償責任は負わないとされています。しかし、空き家の所有者には「管理責任」があります。
- 管理責任違反と見なされるケース:
- 窓ガラスが割れたまま放置され、不審者が容易に侵入できる状態だった。
- 庭の雑草が伸び放題で、放火されやすい環境だった。
- ゴミが不法投棄され、燃えやすい物が放置されていた。
このような管理の不備が「重大な過失」と判断されれば、失火責任法が適用されず、延焼した隣家の家屋や家財の損害を賠償する責任が生じます。特に木造住宅は火の回りが早く、被害が広範囲に及びやすいため注意が必要です。
3. 不法侵入:犯罪の温床になる危険性
長期間放置された空き家は、不法侵入や不法投棄の温床となりやすいです。 不法侵入した者が、空き家の中で犯罪行為を行ったり、第三者を巻き込む事件を起こした場合、空き家の管理を怠っていた所有者も責任を問われる可能性があります。
- 所有者の責任と見なされるケース:
- 窓やドアが施錠されておらず、誰でも簡単に入ることができた。
- 管理を放置し、周辺の治安を悪化させた。
警察の捜査に協力する必要が生じたり、近隣住民からの苦情や行政指導を受けるなど、精神的・時間的負担も大きくなります。
4. 損害賠償は想像以上に高額
倒壊での人的被害、火災による延焼、犯罪利用による被害…。
一度発生すれば、数百万円〜数千万円規模の賠償請求になることも珍しくありません。
火災保険や個人賠償責任保険でカバーできる場合もありますが、老朽化物件では保険加入自体が難しいこともあります。
5. 空き家管理でリスクを回避
こうしたリスクを回避するためには、定期的な巡回・点検・清掃・修繕が不可欠です。
もし遠方や多忙で管理が難しい場合は、空き家管理サービスや賃貸・売却・活用を検討しましょう。
管理状態が良ければ、将来の売却価値や賃貸収益にもつながります。
【まとめ】空き家は「資産」から「負債」に転落する
空き家を放置することは、「誰も住んでいないから問題ない」という安易な考えでは済まされません。倒壊、火災、不法侵入といったリスクは、予期せぬ事故や事件を招き、所有者を破産に追い込むほどの高額な損害賠償責任を発生させる可能性があります。
これらのリスクを回避するためには、以下の対策が不可欠です。
- 定期的な見回り・管理: 窓やドアの施錠確認、雑草の除去など、最低限の管理を行いましょう。
- 空き家管理サービスの利用: 遠方に住んでいるなど、自分で管理が難しい場合は、専門業者に依頼しましょう。
- 売却・活用・解体の検討: 根本的な解決策として、空き家を売却したり、賃貸物件として活用したり、解体して更地にするなどの選択肢を専門家と相談して進めることが、最も確実なリスク回避策となります。
「空き家を使わないから放置」ではなく、「空き家活用または安全管理」へ。
あなたの資産と近隣の安全を守るため、今すぐ空き家の状態をチェックしましょう。

