はじめに:放置空き家は「負動産」になるリスク
空き家を所有していると、毎年かかってくるのが固定資産税です。
利用していなくても課税されるため、「ただお金が減っていくだけ」と感じている方も多いでしょう。
しかも前回の記事で解説したように、空き家を放置し「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクがあります。しかし、空き家は単なる負担ではありません。適切に活用することで、税負担を軽減し、さらに収益を生む「資産」に変えることが可能です。
しかし、条件によっては固定資産税を軽減できる制度や活用方法があります。今回は、固定資産税の軽減につながる具体策と、その際の注意点について解説します。
1. 「特定空家」に指定されないための最低限の管理
まず知っておきたいのは、空き家は放置すると「特定空家」に指定され、
土地の固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が外される可能性があります。
住宅用地特例とは?
通常は住宅が建っている土地の固定資産税が最大1/6に軽減される制度です。
しかし特定空家に指定されると、この軽減がなくなり、税額が6倍になることもあります。
特定空き家指定の回避策
定期的な草刈り・清掃
建物の修繕(倒壊防止)
近隣からの苦情を防ぐ管理
2.賃貸物件として活用する
空き家を居住用として貸し出すと、住宅用地特例が継続されます。
これが最も一般的な活用方法です。空き家をリフォーム・リノベーションして、賃貸住宅として貸し出すことで、安定した家賃収入を得ることができます。
- 戸建て賃貸: 集合住宅と異なり、入居者間のトラブルが少なく、ファミリー層に人気があります。
- シェアハウス: 学生や単身者向けに、複数人で住むシェアハウスとして活用する方法です。初期費用はかかりますが、空室リスクを分散できます。
- 民泊: 観光地や都市部の空き家であれば、民泊として活用し、インバウンド需要を取り込むことも可能です。ただし、法律や条例の確認が必要です。
- 短期賃貸・社宅貸し:転勤者や法人ニーズに対応できます。
【メリット】
- 住宅用地特例が維持されるため、固定資産税が大幅に軽減される。
- 家賃収入という新たな収益源が生まれる。
- 物件に人が住むことで、老朽化の進行を防ぐことができる。
【デメリット】
- リフォーム・リノベーション費用が発生する。
- 入居者募集や入居後の管理(トラブル対応、修繕など)に手間がかかる。
3. リノベーションで固定資産税が軽減される可能性も
空き家をリノベーションする場合、工事内容によっては、建物の固定資産税自体が軽減される可能性があります。
3-1. 特定のリノベーションと減税措置
以下のリノベーションを行うと、要件を満たせば固定資産税が一定期間、減額されます。
- 耐震リフォーム: 昭和57年1月1日以前に建てられた住宅を現行の耐震基準に適合させる改修工事です。工事完了後、翌年度から一定期間、固定資産税が2分の1に減額される場合があります。
- 省エネリフォーム: 窓の二重化、断熱材の追加など、省エネ性能を高める改修工事です。工事完了後、翌年度から1年間、固定資産税が3分の1に減額されます。
- バリアフリーリフォーム: 高齢者や障害を持つ方が住みやすいように、手すりの設置や段差解消を行う改修工事です。要件を満たせば、翌年度から1年間、固定資産税が3分の1に減額されます。
これらの減税措置を適用するためには、工事費用の下限額や工事内容など、細かい要件を満たす必要があります。また、工事完了後、市区町村に申請手続きを行うことが必須です。
【メリット】
- 固定資産税を家賃でカバーできます。
- 建物の価値を高め、売却や賃貸に出す際の競争力を向上できます。
- 住む人にとって快適な空間を提供できます。
4. 解体して「更地」にするリスクと賢い選択
「空き家を解体して更地にすれば固定資産税が安くなる」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは大きな間違いです。
先述の「住宅用地特例」は住宅が建っている土地に適用されるため、家を解体し更地にすると、この特例が解除されます。結果として、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることになります。
ただし、例外的に解体という選択が有効な場合もあります。
- 解体後に新たな建物を建てる: アパート経営など、新たに収益物件を建築する計画がある場合、解体費用はかかりますが、長期的に見れば大きな収益につながります。
- 更地として売却する: 建物が老朽化しすぎてリノベーションが困難な場合、更地にして売却する方が、買い手が見つかりやすいケースもあります。
3. 「空き家譲渡特別控除」を活用して売却

相続で取得した空き家を売却する場合、一定の条件を満たすと3,000万円の譲渡所得控除が受けられます。
これは直接的な固定資産税削減ではありませんが、将来の維持費をゼロにできます。
4. 空き家を「地域貢献用途」に貸す
自治体やNPOに無償または低額で貸し出すと、地域再生事業の一環として固定資産税減免を受けられる場合があります(自治体による)。
例:
子育て支援施設
地域交流拠点
高齢者サロン
5. 自治体独自の空き家税軽減制度を調べる
市区町村によっては、空き家の活用や改修に伴って固定資産税を一定期間軽減する制度があります。
例:
リフォームして若年世帯に賃貸 → 3年間固定資産税半額
登録空き家バンク経由で活用 → 所有期間中減免
まとめ
空き家は、放置すると固定資産税の負担増だけでなく、様々なトラブルの元となります。しかし、そのリスクを乗り越え、適切に活用することで、税負担を軽減し、新たな収益を生み出す可能性を秘めています。
まずは、ご自身の空き家がどのような状態にあるか、立地はどうか、活用するならどのような方法が向いているかを検討してみましょう。リフォームや賃貸運営には専門知識も必要となるため、不動産会社やリノベーション会社、建築士など、専門家の力を借りることも有効な選択肢です。
空き家は放置すると税負担が増えるだけですが、
適切な管理や活用で固定資産税を減らしつつ収入化できます。
**ポイントは「動くこと」**です。
管理して特定空家を回避
- 地域や制度を活用して減免
空き家を「負動産」と諦める前に、「資産」として捉え直し、未来に向けた賢い一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

