補助金は空き家問題解決の大きな味方
「特定空家」制度による固定資産税6倍のリスク、近隣への悪影響など、空き家を放置することのデメリットは多岐にわたります。しかし、解体や修繕には多額の費用がかかるため、なかなか踏み切れないという方も多いのではないでしょうか。
そこで知っておきたいのが、空き家の解体や修繕を支援する自治体の補助金制度です。これらの補助金を賢く活用することで、自己負担を大幅に減らし、空き家問題を解決することができます。
この記事では、空き家に関する補助金制度の概要、申請条件、金額の目安、そして申請から受給までの流れ、注意点までを徹底的に解説します。
なぜ空き家に補助金が出るのか

多くの自治体では、空き家が放置され老朽化することで、倒壊や景観悪化、防犯面のリスクが高まることを問題視しています。
そのため「危険な空き家を減らす」「地域の活性化」を目的に、解体や修繕にかかる費用の一部を補助する制度が用意されています。
補助金の種類
空き家に関する補助金は大きく分けて3つです。
1.解体費補助金
老朽化して倒壊の危険がある空き家を解体する費用を支援する制度です。最も多くの自治体で設けられており、特に昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅が対象になることが多いです。各自治体により異なりますが、工事費の1/3~2/3を補助(上限50~200万円程度)が目安です。
2.修繕・改修費補助金
空き家をリフォームして再活用する場合に、工事費用の一部を支援する制度です。移住者向け、子育て世帯向けなど、特定の条件を満たす場合に適用されることが多いです。各自治体により異なりますが、工事費の1/3~1/2を補助(上限50~300万円程度)が目安です。
3.特定の目的(耐震・省エネ)に関する補助金
住宅の耐震性能や省エネ性能を向上させるリフォームに対して、国や自治体が個別に補助金を出す制度です。空き家だけでなく、一般の住宅にも適用される制度ですが、空き家再生の際に利用できる場合があります。
受けられる条件の例
自治体によって異なりますが、一般的な条件は以下です。
対象物件が所在する市町村にあること。
倒壊の危険性があると認められる老朽化した空き家、昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の住宅など。
個人が所有する空き家であることと、所有者が申請者であること。原則として法人は対象外です。
税金(固定資産税など)を滞納していないこと。
解体・修繕後の用途が自治体の目的に合うこと(賃貸・移住促進・売却など)。
- 反社会的勢力ではないこと。
補助金の金額例(参考)
補助金額は、解体費用の2分の1から3分の1が一般的です。上限額は自治体によって異なりますが、数十万円から最大100万円程度が相場です。ただし、解体費用が上限額を下回る場合は、その費用の一部(例えば1/2)が支給されます。
- 例: 補助率1/2、上限50万円の自治体で、解体費用が120万円の場合
- 補助金額: 120万円 × 1/2 = 60万円
- しかし、上限額が50万円のため、支給額は50万円となります。
補助金申請の流れ

補助金制度を利用する際、最も重要なのは「解体工事に着手する前に申請すること」です。これを怠ると、補助金を受け取る資格を失います。
- 自治体への事前相談: 空き家がある市区町村の担当窓口に連絡し、制度の有無や対象となるかを確認します。この時点で、物件の築年数や状態を伝えるとスムーズです。
- 補助金の事前申請書類提出: 自治体が定める申請書類(解体工事の見積書、建物の写真、所有者の証明書など)を提出します。
- 自治体による審査・現地調査: 提出書類の審査と、担当者による現地調査が行われます。建物の老朽度や危険性を評価されます。
- 交付決定通知書の受領: 審査に通過すると、「補助金交付決定通知書」が届きます。これが届いた後で、初めて解体業者と本契約を結び、工事に着手できます。
- 解体工事の実施: 決定通知書に記載された期限内に工事を完了させます。
- 完了報告書の提出: 工事完了後、領収書や工事完了後の写真など、必要な書類を添えて自治体に報告します。
- 補助金の支給: 自治体の審査が完了後、指定された口座に補助金が振り込まれます。
補助金利用時の注意点
- 申請は必ず工事前に行う: 先ほど述べたように、工事着工後の申請は原則として認められません。必ず事前に手続きを行いましょう。
- 予算に限りがある: 補助金制度は、年度ごとの予算が決まっていることが多く、予算の上限に達すると受付が締め切られます。特に人気の制度は、早め(年度初め)に申請する必要があります。
- 固定資産税の優遇措置がなくなる: 解体して更地にすると、「住宅用地特例」が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。補助金で解体費用を軽減できても、長期的な税負担は増える可能性があります。解体後の土地活用計画を立ててから判断することが重要です。
- 他の補助金との併用: 原則として、同じ工事に対して複数の補助金を併用することはできません。
補助対象外の工事:外構だけ、門扉だけ等補助の対象外の工事があります。
業者の地区限定:業者は地元登録業者に限定されることも多いです。
補助金の調べ方
「〇〇市 空き家 解体 補助金」や「〇〇町 空き家 修繕 補助金」で検索すると、
自治体の公式ページが出てきます。
また、空き家バンクに登録すると補助金利用が条件になるケースもあります。
補助金申請のコツ
写真は「現状の危険性」が分かる角度で撮影する。
見積書は細かく明細化してもらう。
補助金の対象外経費(家具処分など)を分けて記載する。
繁忙期(年度末前)は審査が混むので早めに動くこと。
まとめ 補助金を活用し、空き家問題を前向きに解決

空き家の放置は固定資産税の負担だけでなく、近隣トラブルや行政代執行のリスクもあります。そして空き家の解体や修繕は、決して安くない費用がかかります。しかし、お住まいの地域によっては、その負担を軽減するための公的な支援制度が用意されています。
まずは、お持ちの空き家がある市区町村のホームページを確認するか、直接問い合わせてみましょう。そして、補助金の有無や条件や期限、申請方法をしっかりと把握し、賢く活用することが、空き家問題の円満な解決への第一歩となります。
補助金制度を上手く活用すれば、自己負担を大幅に減らしながら対策可能です。

